
パン屋をはじめスーパーで当たり前のように行われている、安易な「値下げ、値引き」について考えてみます。
お店の商品が売れ残る恐怖はよくわかります。
でもだからといって「値引き販売」に頼るのはいけません。
値引き販売が簡単に利益を吹き飛ばしてしまうヤバさをぜひ実感してください。
記事の後半には「どうしたらいいか?」いくつかのヒントを書いてあります。

パン屋の店長歴15年以上の経験から、解説しますね。
参考になるとうれしいです。
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とある売れないパン屋の日常

店長!
夕方になってもパンが全然売れないので値引きシール貼ってきますね!

売れ残りがたくさんできそう。こわい・・。
仕方ないので値引き販売をしてもらいましょう。
それにしてもうちの新人バイトのいちごちゃんはよく働くねえ・・・。
ほっこり。

閉店までにうまく半額で売りつくしましたあ。

お仕事おつかれさま~
売れのこりがなくてホッとした。ヤレヤレ。
でもパンを作った割には全然売り上げがないなあ。。。
・・こんなことをやっているととってもキケンです!
安易な値下げは命取りになります。

値引きがあたり前になっているととても危険です!
お店は「利益を出すこと」が一番大事です。
値引きが当たり前になっていると
いずれはお店がツブれかねない大変な状態になってしまいます。
この記事を読むと得られる情報
- 値引き販売の危険性
- じゃあどうしたらいいか?提案

パン屋を経営して12年の経験をもとに解説しますね。
値引き販売の危険性
値引き販売の何がいけないんでしょうか?
まずは値引き販売の利点を解説します。
値引き販売の利点を4つ紹介
・他社のほかの商品よりも自分の商品が安いので販売数がUPする。
・お店にお客さんが多く来てくれてにぎわう。
・閉店前にロスを抱えなくてすむ。
・閉店時にロスになって捨ててしまうことを避けられる。

ここまではいいことばかりですね!
値引き販売は使いようによっては使える武器になります!
ただし次のようなマズイ結果も招いてしまいます。
値引き販売による利益の減少例
定価(100%) | 1%値引き | 10%値引き | 30%値引き | 50%値引き | |
売上(円) | 100 | 99 | 90 | 70 | 50 |
コスト(売上の30%) | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 |
利益額(円) | 70 | 69 | 60 | 40 | 20 |
利益の減少率(%) | 0% | 1.5% | 14.3% | 42.9% | 71.5% |
かんたんな例を作ってみました。
この例では100円の商品を売るのに
定価で売る場合の利益をもとにして、
値引きをすると利益額や利益率がどうなっていくのか
をざっくりとですがあらわしています。
たった10%の割引だけでも
利益の減少率が14.3%になってしまっています。
50%引きなんて利益の減少率が71.5%です!
閉店間際によくやる「半額セール」が
いかに悪いかおわかりでしょうか?
安易な値引きが利益の激減を招いています。
FLR比率の観点からも
原価率 + 人件費率 = 60%以内が望ましいので
30%の割引をしてしまうだけでも
ほぼ利益がゼロになってしまうんですよ。
値引き販売をするとさらに悪いことが起こります。
●一度でも値引きされた値段で商品を買ってしまうと
そのお客さんの中では
値引きされた商品の価格 = その商品の通常価格
となってしまいます。
もうそう簡単に定価では商品を買ってくれなくなります。
●販売数量が増えて仕事は忙しくなるのに利益は得られてないので
人件費が増えるのに利益が得られなくて資金繰りが悪化してきます。
このように「恐怖の悪循環」が始まります。
値引きがダメ・・じゃあどうしたらいいのか?いくつかの提案


安易な値引きをするとかなりマズイことがわかりました。
じゃあどうしたらいいんでしょうか?
いくつかの提案をしますね。
〇できるだけ定価で売りたいですよね?
そもそもの商品設計が適切でしょうか?
最近付加価値をつけたからって
ドンと高い値段がついている商品みかけませんか?
自店の商品がいわゆる「ぼったくり商品」
になってないか気をつけてください。
お客さんはかなりシビアに見ていますよ。

近くのスーパーやパン屋が改装して
リニューアルオープンをしたのはいいですが、
何もかも値段が20%は上がってしまっていました。
「だいじょうぶかな?」と思っていましたが、
パン屋は全く売れずにあっという間に閉店!
スーパーは閉店間際の半額セールのみ
メチャクチャにぎわっているようになっていました。
お客さんの求める商品と自店が提供している商品のミスマッチはないか調査してみる。
これによって適正なサイズや値段がわかり
より売れやすい商品を売ることができます。

お客様アンケートなんてやってみるといいですね。
私が前に取り組んだ時には
「パンのサイズを小さくしてほしい」
というものがありいろいろやってみました。
それでできた商品が
予約殺到の大人気商品になってくれましたよ。
おいしい状態で試食を準備してアピールしてみる。

値引き販売ではなくて増量サービスやおまけを考えてみる。
この方法だと
定価販売 + おまけの商品原価
ですむので値引き販売よりも利益へのダメージが減ります。
細かいことを言えばおまけへの製造経費(人件費、包材等)がかかりますが。
値引き販売よりもお客さんの食いつきはよくないですが、そこそこの売れ行きが期待できます。
これも連発したら値引き販売と同じように悪循環になってしまいます。
気をつけましょう。

私もマネキンの時には
この増量サービスをうまく使ってやっています。
〇裏技的やり方

ここで裏技的なやり方を披露しますね。
ただし少しリスクがあるので
わかったうえでやってください。
値引きをしたくなるタイミングで
できるだけ原価の低い商品のできたてを投入します。
そのうえでよりどり○○個〇〇円セールを仕掛けます。
これによって
値引き商品 = 残り物
という図式が壊れます。
しかも出来立てでよりどりセール!
うまくいけば夕方の売りたいときに
お客さんの波をひとつふたつ作ることができます。
パン屋ならプチフランスとか原価が安くサイズが大きくなる生地だけのパンがいいです。
明日の朝食向けに♪なんてひと言もそえるといいですね。
原価の低い商品で行うのがひとつのコツです。
もちろん失敗していっぱいロスを作ってしまうこともあります。
私が店長をしていた時には結構やっていましたよ。
〇売れ残った商品から次の日に売れる再生商品を作って売っていく。
値引き販売する分で次の日の再生商品を作る方法もおすすめです。
ただし食品衛生上認められるような商品にしていかないといけません。
お客さんに「残り物」と認識されないように、見せ方をいろいろ工夫しないといけません。
パン屋なら
・フレンチトースト
・サンドイッチ
・パン粉にしてパンにトッピング
・残ったパンごと生地にして別のお菓子に作り替える
(私のお店では再生品のほうが人気が出ておかしなことになってました)
肉屋で生肉が売れ残ったら
・お肉で作るお惣菜にして販売する。
・お弁当のおかずにしてお弁当として販売する。
魚屋なら
・お弁当のおかずにして販売する。
・煮魚、焼き魚、そのほかの総菜にして販売する。
・漬けにして単品で、お寿司で、どんぶりで販売する。
・昆布締めにして単品で、お寿司で販売する。
(もちろん次の日に売っていい商品のみですが。)
などなどいろいろ考えられますね。
いい値引き販売もあります!

ここまで値引き販売の危険性をいろいろ解説してきました。
値引き販売をせずにできるだけ定価で売る方法も解説してきました。
最後にいい値引き販売を解説します。
いい値引き販売とは・・・
戦略としてあらかじめ考えられた値引きであることです。
どういうことかというと
・新商品の宣伝のためのお試し値引き
・定期購入の特典としての値引き
・会員様限定値引き
などの「販売促進」に有利になるような値引きです。
はじめから
- 広告として
- お店にとって大事なお客さんへのサービスのためとして
使うつもりでの値引きは有効なんですよ。
まとめ


安易な値下げは命取りになります。
値引きがあたり前になっているととても危険です!
値引き販売の危険性や利点も説明しました。
値引き販売をすると恐怖の悪循環が始まります。
値引きがダメ・・じゃあどうしたらいいのか?いくつかの提案
〇できるだけ定価で売りたいですよね?
・そもそもの商品設計が適切でしょうか?
・お客さんの求める商品と
自店が提供している商品のミスマッチはないか調査してみる。
・おいしい状態で試食を準備してアピールしてみる。
・値引き販売ではなくて増量サービスやおまけを考えてみる。
〇裏技的やり方
〇売れ残った商品から次の日に売れる再生商品を作って売っていく。
実はいい値引き販売もあります!

安易な値引き販売はお店の寿命を縮めてしまいます。
目先の利益を取って後で大変なことにならないように、できるだけやらないようにしていきましょう!
この記事では「安易な値下げや値引きの危険性」について解説しています。
安易な値下げを日常的にしていると、「恐怖の悪循環」が始まり、自分のお店が危機におちいります。